介護サービスの運営指導(旧実地指導)とは?監査や指定取消・効力の停止との関連も

コラム50
指定権者(行政)が事業所に対し、適正な運営がなされているか確認するのが運営指導です。この記事では運営指導の流れやポイント、気になる「監査」や「指定取り消し」との関係について解説します。

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介護サービスの運営指導(旧実地指導)とは?

運営指導とは、事業所のサービスの質の確保と保険給付の適正化を目的に、指定権者(※)が事業所の運営状況を確認するものです。

2022(令和4)年3月以前は「実地指導」と言われていましたが、2022年3月31日に出された介護保険施設等指導指針により、実地だけでなくオンラインなどを活用した指導も認められたことから「運営指導」に変更となりました。

※ 介護サービスの指定権限を持つ自治体。都道府県、政令指定都市、中核市など

運営指導の3つの種類

運営指導は「介護サービスの実施状況指導」「最低基準指導」「報酬請求指導」の3つに分かれます。

介護サービスの実施状況指導

施設・設備や、利用者などに対するサービスの提供状況を含む個別サービスの質を確認

最低基準指導

基準などで定められた運営体制を確認

介護サービスの実施状況指導

施設・設備や、利用者などに対するサービスの提供状況を含む個別サービスの質を確認

報酬請求指導

加算などの介護報酬請求が適正かどうかを確認

いずれも原則として指定権者の担当者が事業所を訪問し、各種書類・記録や事業所内の確認、職員へのヒアリングを実施して不備が見つかると口頭または文書での指導となります。報酬に関する不備があれば介護報酬の返還が発生することもあります。

なお「最低基準等運営体制指導」「報酬請求指導」はオンラインなどでの指導も可能とされています。

運営指導の頻度

厚生労働省の定める介護保険施設等指導指針では、原則として指定または許可の有効期間内(6年)に少なくとも1回以上実施することとされています。また運営指導で運営に重大な問題が見つかった場合、以後の運営指導の頻度が高まる可能性があります。

なお居宅サービスのうち居住系サービス、地域密着型サービスのうち居住系サービスまたは施設系サービス、施設サービスについては3年に1回以上の頻度が望ましいとされています。

標準化・効率化への動き

介護サービスでは指定権者によって運営指導の頻度に乖離があり、中には適切な頻度で実施できない地域もありました。背景には事業所数の増加に対応が追いつかないといった事情があります。また指定権者ごと、担当者ごとの運営指導内容の差も課題となっていました。

そこで適切な頻度と公平性の確保を目指し、全国的な指導項目や確認方法の標準化・効率化が進められました。

2022年3月には厚生労働省が「介護保険施設等運営指導マニュアル」を発行し、その中で各事業の「確認項目及び確認文書」「各種加算等自己点検シート」「各種加算・減算適用要件等一覧」を示しました。

参考:介護保険施設等運営指導マニュアルについて|厚生労働省

運営指導の結果次第で行政処分となるケースも

運営指導で著しい運営基準違反や介護報酬の不正請求が確認された・疑われた場合には「監査」が実施される可能性があります。また運営指導後の改善が不十分だった場合も、再指導や監査となります。

監査の結果次第では指定の取り消しなどの行政処分もありえます。なお監査や行政処分については後述します。

集団指導とは?運営指導との違いを解説

指定権者による指導には「集団指導」もあります。集団指導は原則として1年に1回、事業所を1ヶ所に集めて実施されますが、最近はオンラインでの開催も増えています。制度改正の内容や運営指導での重点確認項目、過去に指導となった事例などが伝達されるので必ず出席しましょう。

● 運営指導と集団指導の違い

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監査とは?指定取り消しとは?

監査とは

運営指導と監査は混同されがちですが、実際は全く異なります。運営指導は全事業者が対象で、日頃の運営が適切かどうか確認するものです。指定権者側も、基本的には運営の適正化のために事業者を支援する立場で実施指導に臨みます。

一方で監査は、運営指導や通報などから事業所運営に著しい違反がある、もしくは疑われる場合に実施されます。そのため確認は運営指導より厳しく、行政処分などに繋がる確率も高まります。

● 運営指導、監査、行政処分などの関係

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監査の可能性があるケース

● 運営指導で以下のような内容が疑われた/確認された場合

・著しい運営基準違反が確認され、利用者/入居者などの生命や身体の安全に危害を及ぼす恐れがある
・報酬の請求に誤りが確認され、それが著しい不正だと認められる など

● 日頃の運営で以下のような状況が見られた場合

・(元)利用者や家族、(元)従業員、地域包括支援センター、国保連などから通報や苦情、相談があった
・請求データなどの分析結果が、通常とは違った傾向を示した
・正当な理由なく指導を拒否した
・虚偽の報告をした など

指定取り消しなどの「行政上の措置」とは

監査の結果によっては勧告や行政処分などの措置が取られます。その中で最も重いのは介護サービス事業の指定が取り消される「指定取り消し」です。他に違反や不正などの程度に合わせて「(改善の)勧告/命令」「指定の効力の停止」などがあります。

「指定取り消し」と「効力の停止」

介護事業の指定が取り消されると実質的に事業ができなくなります。効力の停止の場合は、一定期間、介護事業の指定の効力が一部または全部停止されます。そのため効力を停止されている間は、事業の一部または全部ができなくなります。

このように指定取消や効力停止になると、利用者への不利益はもちろん従業員の生活も危ぶまれます。

運営指導では日々の運営が点検されるので、直前の準備だけでの対応は困難です。日頃から適切に事業運営をしたうえで運営指導の日を迎えることが重要と言えるでしょう。

指定取り消しなど行政処分の実態

指定取り消しまたは効力の停止処分があった介護サービス事業所数は、2016年度から2020年度までの5年間で916件にのぼりました。

※ 介護予防/日常生活支援総合事業の事業所を含む
※ 件数には聴聞通知後に廃止届が提出された事業所数も含む

報酬の返還などの「経済上の措置」とは

勧告や命令、指定の取り消しなどに該当すると、報酬の一部または全部を不正に得た利益として返還しなくてはいけません。場合によっては返還金額の40%が追加で徴収されます。

運営指導での確認内容|指定取り消し・効力の停止を避けるポイント

運営指導で点検される項目

運営指導での具体的な確認項目は事業所に届く「運営指導通知」に記載されています。事前提出物が必要なケースもあるため注意しましょう。

指定権者の着眼点(例)

□ 指定基準や関係法令を遵守しているか
□ 介護報酬の請求は適正か
□ 各種届出の内容と実態は一致しているか
□ 「介護サービス情報」、パンフレット、広告などの内容と実態に乖離がないか
□ 利用者の尊厳と安全が守られているか、虐待の兆候はないか
□ 従業員は一連のケアマネジメントプロセスを理解しているか
□ 防災/防犯対策やリスクマネジメントは適切か
□ 個人情報の管理は適切か など

確認される書類や記録(例)

確認対象は原則として運営指導の前年度から直近までですが、違反や不正が疑われる場合は過去にさかのぼって確認があります。

また書類や記録は存在するだけでは足りません。内容は適切か、保管や掲示は適切か、実態と整合性があるか、必要な署名や記名捺印があるか、不正の痕跡はないかなどが細かく確認されます。

なお以下は代表例です。サービス内容によっても違うため、実際の運営指導では「運営指導通知」や指定権者の公開情報をご覧ください。

人員関連

□ 勤務体制一覧表、タイムカード、勤務実績表
□ 職員の雇用契約書
□ 職員の資格証
□ 職員向け研修計画、研修実施記録
□ 職員の秘密保持誓約書

運営関連

□ 運営規程
□ 苦情対応マニュアル、苦情の受付簿、苦情への対応記録
□ 事故対応マニュアル、事故やヒヤリハットの記録、再発防止の検討記録
□ 非常災害時対応マニュアル、消防計画、消火/避難訓練の記録
□ 緊急時対応マニュアル
□ 事業所の平面図
□ パンフレット、チラシ、Webサイト

利用者関連

□ 個人情報同意書
□ 重要事項説明書、利用契約書
□ 介護保険番号
□ サービス提供の記録
□ サービス計画(※)と関連書類(アセスメント/モニタリングの記録、サービス担当者会議録など)
□ 利用者負担額などの請求書、領収書

※「居宅サービス計画」「訪問看護計画」など

その他

□ サービス種別や提供状況により必要な書類
 ・送迎記録、身体拘束関連の書類など
□ 指定権者から指示のある書類 など

指定権者によっては運営指導に対応した自主点検表などを公開しています。運営指導通知が来ていない事業所もぜひ確認をして、不備があれば改善しておきましょう。

指定権者のWebサイトに情報が見つからなければ、先述した厚生労働省の「確認項目及び確認文書」「各種加算等自己点検シート」「各種加算・減算適用要件等一覧」が活用できます。

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運営指導の流れ

運営指導はおおむね以下のような流れで実施されます。

● およそのスケジュール

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事前準備

運営指導通知は、おおむね指導の1か月前までに届きます(※)。同時に届く当日の準備物、確認事項リストに沿って準備を進めましょう。指定権者の案内や指定基準、関係法令と照らし合わせながら一つずつ確認します。また事前提出物がある場合は必ず期日までに提出します。

運営指導には管理者だけでなく、サービス提供責任者や請求担当者など確認項目に回答できる人の同席も認められています。すぐに運営指導当日のスケジュールを押さえましょう。

運営指導前に不備を見つけたら?

確認中に不備がみつかると焦るかもしれませんが、記録の捏造などの不正は絶対にしないでください。不備そのものは指定取り消しなどに該当するほどではなくても、指導や監査での嘘・ごまかしには厳しい評価が下される傾向にあります。

まずは何ができていて何ができていないかを把握することが何より重要です。その上で当日までに改善・解消できることを正しく誠実に進めましょう。

当日

運営指導当日は、運営指導通知に示された進め方に基づき、記録・書類、事業所の設備、利用者の様子の確認、関係者へのヒアリングなどが半日から1日かけておこなわれます。

原則として事前に連絡された内容に基づきますが、必要に応じて他の書類の提出が求められます。著しい不備や不正が疑われるときは、そのまま監査に移行することもあります。

結果通知と対応

運営指導の結果通知は運営指導の日から1~2か月をめどに郵送で届きます。改善事項が記載されていた場合は指示に従って対応し、期日までに改善報告書を提出します。

また介護報酬関連の指摘があれば指示に従って過去の請求に遡り点検し、過誤があれば報酬の返還手続きをして返還完了報告書を提出します。

なお適切な改善がなされない場合は再指導や監査の対象となります。

まとめ

運営指導とは指定権者が事業所に対して、適正な運営がなされているか確認するものです。この記事では運営指導の流れや点検内容、そして監査や指定取り消しなどにならないためのポイントを解説しました。

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※ 本記事はすべての関連情報や指定権者ごとの解釈を網羅するものではありません。記事の内容には万全を期しておりますが、実務においては必ずご自身でも指定権者をはじめとする関係行政や国保連などの最新情報をご確認ください。

監修:高橋 悠
ウェルフェア社会保険労務士法人 代表社員
社会保険労務士 / 行政書士

福祉業界に特化した労務やコンプライアンスの支援サービスをおこなう。 著書に『改訂版 就労移行支援・就労継続支援(A型・B型)事業所運営・管理ハンドブック』『障害福祉サービス事業所の処遇改善加算・特定処遇改善加算実務ハンドブック』など。

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