介護保険|はじめての報酬改定・制度改正【令和6(2024)年度版】

令和6(2024)年度の報酬改定・制度改正について、基礎知識や全体の流れ、報酬改定への備えなどをわかりやすく説明します。

報酬改定・制度改正とは

介護保険法に基づく事業は、その報酬や指定基準などが3年ごとに見直されます。これを「報酬改定」「制度改正」と呼びます。

なぜ報酬や基準が3年ごとに変わるのか

介護保険法は2000年に施行されました。それから現在まで、地域生活におけるニーズの変化や医療的ケアの必要性など、高齢者を取り巻く支援課題は変わり続けています。また事業所運営や職員を取り巻く課題も同様です。

このような変化に合わせるため、事業の報酬体系や指定基準などは定期的に見直され続けてきました。見直しの頻度は3年ごとですが、必要に応じて臨時で実施されることもあります。

次の改定はいつ?

次回の改定は令和6(2024)年の4~6月が予定されています。西暦の下2桁の数字の合計が3の倍数の年に見直しがあると覚えておくとよいでしょう。

(例)
 2024年 → 246 (3の倍数)
 2027年 → 279(3の倍数)……

令和5(2023)年10月11日、報酬改定の施行時期を通常の4月1日から6月1日に後倒す提案がなされました。従来の3月公布4月施行だと、介護事業所や介護ソフトなどのベンダーが短期間での対応を迫られるためとしています。(令和5年10月19日追記)

参考:介護報酬改定の施行時期について(厚生労働省のサイトが開きます)

報酬改定・制度改正の流れ

報酬改定・制度改正は、大きく以下のような流れで進みます。なお表に出てくる用語については、表の後で解説しています。

時期内容
5月~翌1月頃

社会保障審議会(介護給付費分科会)での検討

▼令和6(2024)年度に向けたスケジュール

令和5(2023)年5月
・社会保障審議会(介護給付費分科会)からスケジュールや今後の検討の進め方が出される
6~8月
・主な論点について議論
9月
・事業者団体等からのヒアリング
10~12月
・具体的な方向性について議論
12月
・報酬や基準に関する基本的な考え方の整理、取りまとめ
令和6(2024)年1月
・介護報酬改定案 諮問・答申

1~2月頃パブリックコメントでの意見募集
3月頃官報による周知
3月頃厚生労働省から各指定権者(指定の権限を持つ自治体)へ周知
3月頃指定権者から事業所へ周知
3月下旬頃厚生労働省から解釈通知が示される
3月下旬以降厚生労働省からQ&Aが示される
4~6月施行

キーワードの解説

社会保障審議会(介護給付費分科会)

社会保障制度のうち介護保険に関する部分を調査審議しているのが、社会保障審議会の介護給付費分科会です。介護報酬については、ここでの意見をもとに具体的な議論が進められます。なお介護保険全体に関する調査審議については介護保険部会によって行われます。

社会保障審議会(介護給付費分科会)(厚生労働省のサイトが開きます)

パブリック・コメントによる意見募集

パブリック・コメントは、政令や省令などを決める前にあらかじめその案を公表し、国民から意見、情報を募集する制度です。

介護保険サービスなどの報酬や基準を改定する際も、事前に改正案が公表され、意見が募集されます。またその結果(意見と回答)も公表されます。

パブリック・コメントの募集ページ(e-Govのサイトが開きます)

官報による周知

官報は法律や政令などの制定・改正の情報が掲載される国の機関紙で、インターネット上でも閲覧できます。報酬改定・制度改正の際も、最も早く正確な内容を知りたいときは官報を確認することになりますが、慣れない人には見づらいかもしれません。

インターネット版官報(国立印刷局のサイトが開きます)

厚生労働省から各指定権者への周知

厚生労働省から各指定権者には3月頃に周知されます。各指定権者はこのタイミングで正式に改定内容を受け取ります。

指定権者から各事業所への周知

指定権者から事業所への周知は、場合によっては3月末になることもあります。Webサイトに掲出する、3月に集団指導を開催して伝えるなど周知の方法はさまざまです。指定権者の案内を見逃さないようにしましょう。

解釈通知、Q&A

報酬や基準は厚生労働省の省令や告示として定められます。それらの内容をさらに具体的に説明するのが「解釈通知」です。

また報酬改定・制度改正からしばらくは指定権者も解釈や判断に迷うため、各指定権者から厚生労働省への問い合わせが発生します。その事例をまとめたものが事務連絡として出される「Q&A」です。

報酬改定・制度改正に備える

報酬改定・制度改正は、その内容によっては事業に大きな影響を与えます。そのため3月の指定権者からの周知を待ってからの対応では、事業運営に支障をきたす可能性があります。事業所としてどのような備えができるでしょうか。

経営への影響を見極めたい

早めに情報を収集する

事業の基本報酬や加算減算に変更・新設があると、収益はもちろんのこと、職員の配置やサービス内容、日々のオペレーションにも影響します。改定内容を早めに把握して次年度の見通しが立てられるようにしましょう。

情報が確定するのは3月ですが、方向性は12月頃、概ねの内容は1月頃に、厚生労働省の社会保障審議会(介護給付費分科会)のWebサイトに掲載される資料で把握できます。

社会保障審議会(介護給付費分科会)(厚生労働省のサイトが開きます)

特に新たな加算が創設されるときは、算定のための対応コストと得られる額を比較して算定するかどうか判断することになります。要件を満たせるか、満たすには何が必要かなど事前に情報収集をしておくといいでしょう。

実態に合った改定をしてもらいたい

介護事業経営実態調査に協力する

「介護事業経営実態調査」は事業所の経営状況を把握するものです。この調査で回答した内容が、社会保障審議会(介護給付費分科会)で使用される大切な検討資料になります。

「介護事業経営実態調査」が事業所に届いた場合は、事業所の実態を正しく伝えるためにも可能な限り協力しましょう。

改定案に意見を伝えたい

パブリック・コメントに意見を出す

パブリック・コメントは、国民が省令や告示に対して意見を述べられる数少ない機会です。パブリック・コメントに寄せられた意見が実際に影響を及ぼすこともありますので、基準や報酬に関する改正内容に疑問や懸念があれば意見を出すといいでしょう。

最後に

基準や報酬に関する改定は上記の通り手順が決まっています。その流れを把握しておくと、基準や報酬の変化に対応した運営ができます。また国が介護保険制度について何を課題として何を求めているかを理解することは、国や利用者のニーズに合った事業運営の助けになるでしょう。

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※ 本記事はすべての関連情報や指定権者ごとの解釈を網羅するものではありません。記事の内容には万全を期しておりますが、実務においては必ずご自身でも指定権者をはじめとする関係行政や国保連などの最新情報をご確認ください。

執筆:瀧上 真悟
社会福祉士
千葉県社会福祉会会員 / JAPAN MENSA会員

社会福祉法人、NPO法人、株式会社で様々な福祉事業の立ち上げや運営に携わった後、福祉コンサルタントとして独立。障害者総合支援法、児童福祉法、介護保険法に基づく事業を運営する企業をサポートしている。

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